03.私はあなたを裏切らない











「…くそっ!」

ドンッ。

怒りにまかせて拳をデスクに叩きつける。

「なんで…なんでこうなるんだ‥!」

何もかもが不利だった。
高田を介して魅上とコンタクトをとり、捜査本部に受け入れたまでは順調だったのだ。
実際、忠実で優秀な魅上は役に立った。
ニアやメロの所在を掴んだのは彼の機転のお陰に他ならない。
だが月が有利だったのはそこまでだった。
どれだけ綿密に計画を立てても常に一歩先を行かれ、逆に窮地へ追い込まれる。
ニアやメロの手際は鮮やかだった…そう、まるで始めから何もかも知っていたかのように。
そしてミサの突然の死。
度重なる死神の目の交換に、ミサの寿命は限界まですり減っていた。
絶対の味方であった彼女の死は、月に多大な衝撃を与えた。
次第に不利になる形勢、ミサの死に追い詰められ情緒不安定になってゆく月。
日に日に冷静さを失い、声を荒げ、感情的に振る舞うことも増えた。
そんな月に対し、不信感を抱いていた相沢を筆頭にひとり、ふたりと本部から人が消え、最後まで残っていた松田でさえもつい先程出て行ってしまった。

「ごめんね、月君…。
疑いたくはないけれど、僕はもう君を信じることができない。」

そう言って静かに背を向けた松田の姿が甦り、月の華奢な肩がわなわなと震える。
憤怒、屈辱、焦燥…様々な感情がない混ぜになり、神経が昂ぶって目尻に涙が浮かんだ。

「…なんでなんでなんでなんでっ!」

デスクの上のものを、手当たり次第に掴んでは投げ付ける。
捜査資料がバサバサと宙を舞い、絨毯の上に散らばった。

「……月さん?」

荒い息をついているところへ、不意に声がかかった。
先程まで、全く気配を感じなかったのに。
振り向けば、入り口に立つ長身が見えた。
いつも通り、冷静さをたたえた端正な美貌が、月を視界に入れてふっと優しく微笑む。

「こんなに荒れて……一体何があったのですか?」

しゃがみこんだ月に近付き、目線をあわせて幼子にするように、やさしく、あまったるい口調で尋ねられた。
たまらなくなって、照の首筋に縋りつく。
動揺する様子もなく、ゆっくりと背を撫でる大きな手が心地よい。

「てる…てるっ‥!
……さっき松田さんも行っちゃったんだ…どうして、どうして誰も僕のことを分かってくれないんだっ」

「私が貴方のことを全て理解しています。
…貴方のことを理解するのは私だけでいい。そうでしょう?」

いとしくてたまらない、というように目を細めて見つめられ、少し落ち着く。

「……照、して。もう、何も考えたくないんだ・・・・。」

「全ては、あなたの望むがままに。」

甘えた声音で命令すれば、年上の男は嬉しげに返事を返し、いそいそと自分を抱き上げてベッドルームへと向かった。
照とこういう関係になったのは、いつからだったのだろう。
いつのまにか、流されるままに躯を重ねていた。
初めての強烈な快楽に溺れた躯は、すっかり慣らされて今では照なしではいられず、毎夜夜泣をする。
月は、照に心も身体も依存しきっている自分を自覚していた。
けれど、何の心配もする必要などないのだ。

「照…好きだよ。僕には君だけだ。
君がいてくれたら、他にはいらない…。」

この男が月を裏切ることなど、けしてないのだから。

「はい。愛しています…私だけの神……。」

照が嬉しそうに破顔した。



















照月同盟さま配布、照月10題『NO.03私は貴方を裏切らない』より。
なんか続きそうなかんじです…てゆうかコレ脳内にいろいろ構想があったんですが…アッレ忘れた?(死
もう老衰なんで…思い出したらまた書きます!(爆

御影








※ブラウザバックでお戻り下さい。


2005.11.27