幻水5詰め合わせ:リヒャルト編
「おーじっさまっ♪」
「…?」
呼ばれて振り返ると、ニコニコと人の良さそうな笑顔がすぐ後ろにあった。
思ったよりもずっと距離が近くて、驚きに少し後ずさってしまう。
最近滝つぼで出会ったばかりの、確かリンドブルム傭兵旅団の一員だ。
一見そうは見えないのだが、旅団の斬り込み隊長でなんでも剣聖と呼ばれる程の剣の腕らしい。
短い付き合いだが、彼の笑顔以外の表情は一度も見たことがなかった。
「あの、なにか?」
日頃はどんなに戦況が逼迫していても、一人、我関せずの態度を貫いている彼が自分に声をかけてくるなんて、よっぽどの事態に違いない。
あまり話したことがないので気を悪くさせないよう、慎重に様子を伺いながら用件を尋ねる。
しかし彼はいつまで経っても自分の顔をニコニコとと見つめてくるだけで、特に切迫した様子は見受けられなかった。
「えっと…?」
困ったようにことりと小首を傾げる。
「ん〜…僕さあ、ミューラーさんのこと、大大大大大大大っ好きなんだよね」
きょと、と瞬くと同じように首を傾げて見せた彼が独り言のように嘯いた。
「でもさ、ミューラーさんとは別の意味で君のことも気になるみたい」
「ぇ…」
彼の“ミューラーさん好き”は城内でもよく知られているのだが…続く言葉の意味がよく分からなくて、戸惑ってしまう。
その様子を見てとったのか、彼はニコッと一際華やかな笑顔を浮かべた。
「つまり、こーゆーコト」
ちゅ
弓なりに吊り上がった唇が反応する間もなく近付き、唇に軽い感触を残して、またすぐに離れる。
呆然と彼の顔を見上げると、何事もなかったかのような笑顔がそこにあった。
「一応、言っとこうと思って。引き留めちゃってごめんね?」
「え…あ、いえ…」
「それと、僕の名前、リヒャルトっていうんだ。ちゃんと覚えといてね。
じゃあ僕、ミューラーさんのとこに戻るから」
じゃあね〜と軽く手を振られて、流されるように振り返す。
「…結局、何だったんだろう?」
相談されたミアキスが、王子も相当鈍いですねぇ〜と呆れ返るまで、あと少し。
終
リヒャルト君、強いです。
ちなみに内のパーティーで一番強いのが彼…。
ああいう性格のキャラいいですよね!王子にも懐いてくれたらな〜(爆
御影
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2007.02.22