なんか目が死んでる











「なんで、」

薄暗い室内には動物じみた荒い息遣いが二人ぶん、せわしなく響いていた。
投げ遣りに吐き出した言葉は、意味をなす前に新たに喉奥を突き上げた嬌声にかき消される。

ぐちゅり

敏感な内側をいささか無遠慮にかき回されて、くふうと鼻にかかった息が漏れた。
ひくひくと物欲しげに蠢く窄まりに強い視線を感じて、肌が熱くなる。
そこは前から伝った自身の先走りのせいで、既にぐちょぐちょに濡れてしまっていた。
まだ陽も高いうちから、引き裂く勢いでシャツの前をはだけられ下半身をひんむかれ、屈みこんだ黒い頭が揺れるのをぼうっと見ている自分は一体なんなのだろう。
背にした体育マットの感触は硬く、ベッド代わりには満点とは言い難い。
使われなくなって久しいのか、みじろぐたびほこりっぽい臭いが鼻をついて、綱吉は顔をしかめた。
とは言うものの、ただでさえそう広くもなく、所狭しと並んだ体育器具のせいでさらに窮屈さを感じさせる並盛中学校第二体育倉庫(運動場を挟んだ校舎の反対側に位置するここしか体育倉庫は存在しないはずだが、何故第二なのかは知らない)は、今や発情した動物の発する生々しい汗の臭いと独特の青臭さに満たされつつあったのだけれども。

「ふっ……は、‥あァ‥あっ…‥」

ぼんやり思考を飛ばしているうちに指が三本に増やされていたようだ。
白くて、長くて、優美で、それでいてトンファーを操るせいか筋張って節くれだった指が、咎めるようにばらばらに動き、擦りたて、突き上げてみせる。
綱吉を知り尽くした指先が最も敏感な一点をかすめ、息をつめた瞬間、がり、と尖った爪で引っ掛かれた。

「ひゃッ…あ、アアアアッ」

目の前が真っ白にスパークして、みっともない悲鳴がほとばしる。
どくん、と既に限界まで張り詰めていた昂ぶりが弾けたのを感じ、絶頂の余韻に浸りながらゆっくりと視線を下ろすと、じっとこちらを観察している無機質な黒瞳にいきあたった。
その白く端正に整った顔が白濁に汚れているのを見てとって、僅かな罪悪感に苛まれる。
いや、昼休み獄寺たちと別れ更衣室に忘れていた体操服を回収してぼんやり歩いていた綱吉を拉致し、人気のない体育倉庫に連れ込んで無理矢理ナニをおっぱじめなすすべもなく午後の授業をスケープさせた張本人なわけで、どちらかと言えば罪悪感を抱くべきは目前の人物であるのだが。
この綺麗な顔を自分のお粗末な欲望で汚したかと思うと、なんとなく申し訳なくてごめんなさいい!とひれ伏して謝りたくなってくるというものだ。
けれど口をきくのもおっくうで、そのまま白い顔のあたりにぼんやりと視線をさ迷わせていると、赤い唇が薄く開かれた。

「………?」

ぺろり、赤い舌が唇のまわりに垂れた白濁を舐めとる。
卑猥な光景に一瞬目を奪われるが、すぐに我にかえり、綱吉は半ば呆れた視線を向けた。

「な…に、やってんですかアンタ……」

「さあ」

ただたんに口の端に垂れた、だから舐めたというようなどうでもよさそうな声音が返される。

「……ンなモンうまいわけないでしょうに…」

「まずい。でも嫌いじゃない」

「…は?大体なんでいつもこんなことするんで……う、アァッ」

それまで動きを止めていた指の動きが不意に再開され、またも綱吉の言葉は遮られた。
我がもの顔で内部を這い回る白い指先に、再び身体が熱をはらみ始める。

「うるさい。少し黙りなよ、つなよし」

「…ン…っ‥‥く…あっ、あ、アァ…ッ……」

「今ぼくと君がこうしてること以外、みんなどうだっていいんだから」

息も絶え絶えになっている顔を、黒々とした深淵に覗き込まれる。
夜の湖面のように凪いだ双眸は、しかし虚ろだった。
からっぽ。何もない。
ただどろどろとした生温い何か、ひたひたと足元に押し寄せて音もなく全てをのみこんでゆく、得体の知れない何かが奥底にわだかまっていた。
濁った虹彩は死人の目によく似ている。

「……ぅ……あっ…んぁ…ッ…」

熱い息を吐いて、綱吉はゆっくりと目蓋を下ろした。
吊り上がり気味の切れ長の瞳に映る自分もまた、死んだ目をしていた。



















なんつーか、私目が死んでる。
タイトルは言わずもがな、某ギャグ漫画日和(某の意味なし)のアニメOPから(笑
私、リボで一番好きなのはむくつなだと思い込んでたのですが、最近実はひばつなが一番好きなのではないかということに気がつきました。
ひばつなばかり書いてねえかコレ‥!
ザンザス様が気になる今日この頃。
でも黒曜も忘れられない…霧のリングは骸さまだと信じています。

御影








※ブラウザバックでお戻り下さい。


2006.04.13