ちかんでんしゃ:02



※微エロかつお下品です。苦手な方ご注意。









「貴様…いい加減にしろっ」

周囲に聞こえないよう低くひそめた声で言うと同時、綱吉は背後の変質者目がけて肘鉄を打ち込んだ。
常ならば絶対しないような行為であるが、やはり車内の熱気に綱吉の苛つきも最高潮に達していたのだろう、ためらうことなく全身の力をこめる。
しかし悲しいかな、綱吉の貧弱な腕はやすやすと力強い手のひらに捕えられ、そのまま後ろ手に拘束されることとなった。

「クフフフ。思ったよりも気が強いんですねぇ…これは嬉しい誤算です。
従順な獲物をいたぶるより、必死の抵抗を無理矢理ねじ伏せてやる方が楽しいですし」

ザァアアッ

先程までの怒りはどこへやら、綱吉は全身の血の気が引く音を聞いた。

ほ、ホンモノだ…こいつホンモノの変態さんだァアー!
あぁっ、俺の馬鹿!だから関わるとろくなことがないって分かってたのにー!

どうも背後の変態を喜ばせてしまった(らしい)自分の常にない行動を悔いるが、今更どうすることもできない。
しかもそうこうしている間にも、更に変態の魔手は綱吉に迫ってきていた。

「ひぐっ」

なんか後ろで固定されてる手に妙な感触が……。

「…ちょっ…お前なに触らせてんだっ!?」

嫌な予感に綱吉がひそめた声を荒げると、背後の変態が喜色を込めて答えた。

「クフ。なにって…もちろん僕のナニですよv」

「うぎゃアアアーっ!」

「そんなに嫌がられると余計燃えますねぇ」

「キィヤァァアアア!」

思わず懇親の力で相手の急所を握り潰しそうになるが、しかし敵の対処の方が早かった。

「ひッ」

空いている方の手をさっと前に回すと、綱吉のソレをぎゅっと握りこんできたのである。
少し痛いぐらいの刺激は綱吉の動きを止めるのに十分であった。

「動かないで下さい。…あなただって痛い思いはしたくないでしょう?」

「……こン…ッの…‥」

「大丈夫、僕の言うとおりにすれば気持ち良くしてあげますから」

全然大丈夫じゃないーっ

綱吉の胸中をよそに、変態の長くしなやかな指が不穏な動きをし始めた。
綱吉のかたちを爪先で辿り、敏感なそこをやわやわと握りこまれる。
そして、そこをいじられるとどうしようもなくなるのが男の性なわけで。

「…かわいいですねぇv」

「うるさっ…ゃ…ひぁッ…」

密かに気にしていたことをぐっさり抉られて、抗議に開いた口から漏れた妙な声に、綱吉は顔を青ざめさせた。

お、俺なに気持ち良くなっちゃってんの…?

その声に機嫌をよくしたのか、変態は綱吉の赤く染まった耳たぶをねっとりと舐めあげて囁いた。

「かわいそうに、これだけで反応するなんて…最近触ってあげてなかったんですか?
クフフ、でも安心してください。これからは僕が毎日ヌいてあげます」

確かに淡泊な質であまりそこをいじることはないが……綱吉は後半の台詞は聞かなかったことにした。
そうするうちにも変態の手は忙しなく動き続けている。
綱吉のズボンのベルトをはずし、ジッパーを下げ、パンツの中に…ってえええええ!

「お、おいっ…!」

「ズボン、落ちないように掴んでてくださいね。恥ずかしいのは君ですよ」

とっさに言われた通り空いた手でずり落ちそうなズボンを掴むが、あまりの仕打ちに言葉が出ない。
こいつは周囲の人たちに気付かれても全く構わないのだろうか?
さすがにこれだけすれば、周りも気付くに決まっている。

お前は構わなくても俺は構うンだよ‥っ

三十路のオッサンの自分が男子学生に痴漢されましただのとは死んでも誰にも知られたくなかった。
しかも職場が職場であるだけに、いっそうその思いがつのる。
しかし幸か不幸か、その綱吉の心配は杞憂に終わった。
おどおどと左右に視線をやっても目に入るのは灰緑の高い壁だけ。
よく見れば、先程見かけた学生服の金髪と眼鏡の二人組の背中である。
そうなると目前はドア(しかもこちら側はまだ当分空かない)、背後は例の変態なわけで、周囲からは綱吉が何をされているかは分からないだろう。

「クフ、彼らは僕の仲間ですよ。」

そう告げられた瞬間、綱吉は別の心配に顔を引きつらせた。

それって逃げられないってことなんじゃ……

しかしその思考もすぐに停止させられる。

「もうこんなに濡れてる…」

「くぅ…ッん」

熱い手のひらに握りこまれ、鈴口に爪を立てられて、その直接的な刺激に綱吉の頭は真っ白になった。
リズミカルに扱きあげられる度、綱吉の先走りでクチュクチュと小さく水音がしてそれが更に羞恥を煽る。

「…ん……ッ…あァ…」

触れられ慣れていないそこは、強い刺激にすぐに限界まで張り詰めた。
もう少しの刺激があれば…しかし肝心のところで幾度もはぐらかされる。
熱い。イかせてくれるなら、もう痴漢でも何でもいい。
ついに正気であれば卒倒するような思考にまで到達したとき、それを裏切るように綱吉の昂ぶりから手が離された。
そのままズボンの中から出ていってしまう。

「……やぁ…っ…ン…」

思わず不満げな声が漏れて、綱吉は我に返った。

俺は今何を考えてたんだ……

しかしすぐに戻ってきた指に、その思考も中断された。
何かひんやりとするものを伴った指が後ろの窄まりを撫でているのだから、それどころではない。

まさか、まさか…!!

「力を抜いててくださいね…」

「…ぐ…っァ…」

願い虚しく、強引に入り込んできた異物の痛みに、綱吉は悲鳴を呑み込んだ。
しかし綱吉の痛みをよそに、塗りたくったローションの滑りを借りて長い指は奥まで突き進んでくる。
引きつるような痛みに気が遠くなり、綱吉はいつのまにか開放されていた両手で目の前の扉にすがりついた。

「すぐに気持ち良くなりますから」

うるさい。黙れ。死ね。
こっちはめちゃくちゃ痛いんだよっ

そう心中で罵っていると、それを宥めるように、綱吉を開放した手が、痛みに萎えかけた綱吉のソレをやさしく扱いた。

「快楽に集中して…」

暗示をかけるような低く甘い声音に従って前に意識を集中すると、段々痛みが薄れていくのが感じられる。
後ろを突き上げるのと同時に前を扱かれて、もう何が何だか分からなかった。

「ひぁ……ぁっ」

不意に奥のある一点を無遠慮な爪先がかすめて、綱吉は息を呑んだ。
激しい快楽が脳髄を走り、トピュと白濁が溢れる。

「クフフ」

しめたというような笑いが耳元で零されて、次の瞬間、そこを重点的に突き上げられた。

「…ひゃ……っ……あふっ…ァアッ」

「ここが感じるんですね?」

嬉しげな声音が忌々しい。
綱吉は微かに眉をしかめたが、車内に響いたアナウンスにまたも顔を青ざめさせた。

『次は並盛駅。並盛駅。ドアの開閉にお気を付け下さい』

次に開くのはこちら側のドア、しかも綱吉が降りるのもここだ。

「おやおや…残念ですが仕方ありませんね」

我がもの顔で綱吉の内部をまさぐっていた指が引き抜かれ、手際よく元どおりに、乱れた下半身が整えられる。
もちろん中途半端に投げ出された昂ぶりも無理矢理収められた。
濡れた下着が気持ち悪い。
ドアが開いて人の波に押し出される。

自分を弄んでいた変態はいったいどんな奴なのだろう?

絶対に顔を見てやると後ろを見上げた綱吉は瞬間、目を丸くした。
独特の髪型だが青みがかった黒髪は艶やかで、白い顔には一つ一つ完成されたパーツが完璧な配置で並べられている。
滅多にお目にかかれないような美形だ。(ただし綱吉はこの手の変態な美形は見慣れていたが)
薄い唇は弧を描き、特徴的な赤と青のオッドアイは、喉を鳴らしている猫のように満足気に細められていた。

「ではまたあとで…沢田先生」

「なっ…お…まえ…!」

「クフ、骸ですよ。今後もよろしくお願いしますね、先生v」

自分のことを知っているらしい口振りに、更に綱吉を驚きが襲った。
ウチの学校は学ラン(一人例外を除く)じゃないし…誰なんだ?
傍に寄ってきた仲間らしい詰め襟の二人とのやりとりを茫然と眺めることしかできない。

「行きましょう骸様。初日から遅刻はあまりよくありません。」

「これから沢田先生と、駅だけに駅弁といきたかったんですがねぇ…」

「下品です、骸様。これ以上は付き合いかねます」

「そうれすよー、骸さまが痴漢プレイしたいってゆーから俺らあんなゴーモンみたいな人混みも我慢したんじゃないれすかー!」

「僕に逆らうんですか…?…まぁいいでしょう、行きますよ犬、千種」

そういって去ってゆく背中をぼんやりと見送って、彼らの姿が完全に消えたあと、いつのまにかベンチに座り込んでいた綱吉は下半身の切迫した状況に我に返った。

「くそう、なんで俺ばっかりこんな目に…」

こそこそとコンビニでパンツを買い、情けなさに涙目になりながら駅のトイレで処理を済ませれば、もう完璧に遅刻である。

あーあ、またあの小煩い教頭にガミガミ言われるんだろうなァ…

しかしそんなことよりも心配なのは、今のを生徒に見られたか否かだ。
普通の生徒よりかは一本遅い便だとは言え、遅刻して乗り合わせた生徒に見られてないとは言いきれない。
もっとも、あの恐怖の代名詞である風紀委員長がいるかぎり遅刻する生徒は少ないだろうが。

「ま、いいや…」

過ぎたことは気にしない。都合の悪いことは忘れる。これが二十五年間綱吉が培ってきたポリシーである。
男が男に痴漢にあえば、普通落ち込むものだが、事なかれ主義の綱吉の神経は意外にも図太かった。
早々と忘れることにして、駅から徒歩十分の並盛高校へむかう。

「沢田先生、おはようございます」

しかし、覚悟していたネチネチの嫌味はなく、綱吉は笑顔の教頭に出迎えられた。

「?おはようございま…ッ!?」

何か良いことでもあったのだろうか?
首を傾げつつも挨拶を返した綱吉は、教頭の背後に二度と会いたくなかった顔を見つけて思わず数歩後ずさった。
綱吉の引きつった視線に気付いたのか、教頭がにこやかに紹介を始める。

「ああ、彼らですか。今日から沢田先生のクラスに転校してきたんです。
…あの六道グループの後継者だそうですから、くれぐれも粗相のないように」

ああそういうことね…後半は声を潜めて囁かれて、綱吉は目を遠くした。
この分だと相当の寄付金を頂いたのだろう。
そんで俺はこれからこの変態にへいこらしなきゃいけないと…涙が出そうだ。

「クフフ、初めまして…改めて末長くよろしくお願いしますね、沢田センセv」

変態はとてもいい笑顔でしらじらしくのたまっている。
頬を薄赤く染めて言うところが恐い。
まわりの女性教諭は年甲斐もなくその美貌に見惚れていたが。
うっとりとこちらを見つめる色違いの瞳に、綱吉は今後の受難を予想して大きく身を震わせた。










終・・・?








ちなみに骸サマは登下校中お迎えの車から見かけた沢田先生の道路わきの溝に足をはめるという素晴らしいドジっぷりに一目ぼれしました。
駅弁したいとゆー骸様のお言葉は私のものです。(死
てゆーか最後らへんまで骸さんを変態よばわりで通しているワタシ…ン、気にしない!(うおい!
またも時間切れで本番回避だし…見なおしてないので文章も変ですいませ…がはっ
けれども土日に書くつもりだったのに一気に書き上げられました!拍手のかた、気力をありがとうございました‥!
それでは出勤してまいります…ねむい…。

御影








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2006.06.22