※『獣の家』を少しいじってむくつなバージョンにしてみました。地の文はそのままですので、同じのは読みたくないなあというお方はご注意くださいっ;
本当にセリフや表現をいじった程度であとはそのままですので…;
※骸さんがバイオレンスです。綱吉に執着しまくりです。
ていうかなんかもうオリキャラレベルに別人です…。
※エロありますが、回想でもヤバい表現あります。
ぶっちゃけ強姦してます。そんなに描写ない…と思いますが見る人によってはかなり痛いかもしれません…。
※骸さんが女性関係匂わせてます…つーか極悪非道です。ろくでなしです。そんな骸さんイヤー!という方はご遠慮下さい…。











獣の家(むくつな義兄弟ver):01











「おつかれさまでした!お先に失礼しますー」

「おつかれさまー」

入ったばかりの可愛い女の子が、愛想良く帰宅の挨拶をして雑然としたフロアを後にする。
それを見届けてから、綱吉はハァと重い溜息をついて散らかったデスクの上に突っ伏した。

「沢田くんも大分疲れてるようだから、そこそこで切り上げてくれていいからね」

「いえ…俺はこれ終わったら帰らせてもらおうと思ってるんで」

「そうなのかい?無理はいけないからほどほどにしなさいね」

その疲れ切った様子を見かねたのか、人の良い初老の部長が帰宅を勧めてくれたが、綱吉はくたびれた笑みでそれをやんやりと断った。
今はまだ、あの部屋に帰りたくはない。
本来ならば定時にあがって、脇目も振らず真っ直ぐ帰宅していたはずなのに。
それを思うと、ますます重い溜息が零れてしまう。
―――綱吉があの閉鎖された屋敷を出てから、もう二年の月日が流れていた。
…いや、今日から21歳を数えるのだから、三年になるのだろうか。
高校卒業と同時、必死に引き止める使用人達を振り切り、18歳の若さで家出同然に綱吉はあの屋敷を飛び出した。
後で父親には連絡を入れ、せめて大学卒業までは、と反対する声を押し切って、自分のことは自分で決めたいと必死の説得もしたのだ。
異母弟には……あの冷えた色違いの双眸を思い出し、綱吉はぶるりと大きく身を震わせる。
フランス人を母に持つ異母弟は赤と青のオッドアイという、世にも稀な絢爛極まる容貌を誇っていた。
左右で色の違う切れ長の瞳が光を反射して妖しくきらめく様は、壮絶なまでに美しい。
だからこそ、それが嗜虐と狂気に恍惚と歪められたときはより一層その残虐性が際立って、いつも底知れない恐怖が綱吉を飲み込んでいた。
当然、その異母弟には何も告げてはいない。
父親にも居場所を教えないように、固く言い含めておいた。
帰宅後綱吉の出奔を知った彼は、絶対に綱吉を探し出そうとするだろうから。
異母弟とあの屋敷で過ごした濃密な日々…それが、まるでつい先日まで続いていたかのように、鮮明に脳裏に蘇る。
ぺろりと舌なめずりをして、にたりと吊り上がる赤い唇。
まだ少年の細さを残しながらも男っぽく筋張った、綱吉の全てを暴き立てる白い指。
心の奥底までも覗き込もうとする、底無し沼のようにどろどろと澱んだ、ほの昏い焔を揺らめかせる色違いの双眸。
にいさん、とほの暗い執着を滲ませた甘ったるい呼び声が耳元で聞こえた気がして、吐き気がする。
大企業を経営する父親は多忙で、あの屋敷に帰ることなど年に数回もなかった。
屋敷の実質的な支配者は、異母弟である六道骸に他ならない。
ゆえに、綱吉が骸にどんな扱いをされていようと、誰も止めるものなどいるはずがなかった。
広大な敷地を囲う巨大な門の中は、外界と完璧に切り離されている。
門の中で起こったことは、けして外には漏らされない。漏らされてはならない。
代々六道家に仕える使用人達は皆一様に見てみぬふりをし、固く口をつぐんだ。
母の奈々が残した少しばかりの遺産も預かるという名目で取り上げられてしまえば、他に身寄りのない綱吉は逃げ出すこともできなくて。
声をかけてくれた人もあったが、さすがに無一文でやっかいになるようなことはできなかった。
そうして骸は、綱吉が15から18になるまでの三年間を、綱吉の絶対者として君臨したのだ。
初対面の一悶着がよほど気に障ったのだろうか、骸は綱吉に妙な執着を見せた。
愛人であった奈々のことを蔑まれ、瞳を怒らせる綱吉をひどく殴りつけて、さも愉しそうに、わらう。嗤う。
反抗的だと肋骨を折られたこともある。
しかし、暴力に慣れているのか正確に綱吉の限界を見極め、徹底的に叩きのめした後はいつも、壊れ物に触れるかのような優しい手つきで丁重に手当てを施されていた。
綱吉には、その真意が全く分からなかった。
どうしてこんなことをするのか。
愛人の子が気に入らなくて痛めつけたいだけなのならば、何故手当てを施すのか。
直球で聞いてみたこともある。
けれど、それに返る明確な答はなくて。
僕はただ、兄さんのことが大好きなだけですよ?
そう言って、骸はにっこりと愉しそうに底の知れない笑みを浮かべるだけだった。
ただ暴力的だっただけのそれに、性的なものが混じり始めたのはいつ頃からだっただろう。
あれは確か、骸が小学校の卒業式を迎える少し前―――その日も綱吉が帰宅するなり立ち上がれないほどに酷く殴り付けたあと、骸はあまく囁いたのだ。

『兄さん、そう言えば今日は、面白いことがあったんですよ。』

『………ぅ…ぐ……』

『何があったか聞いてはくれないのですか?
…ああそうか、そんなになってちゃ聞けませんよね。まぁ、いいでしょう。
担任の女教師がね、僕の上に乗ってきたんです。
23だったかな?僕と十も離れたオバサンのくせにね。
でも、そのお陰でいいことを知りました』

『……ぁ………?』

普通ならトラウマに成り兼ねないようなことを平然と話す骸に、綱吉は腫れ上がった瞼のせいで狭まった視界を向けた。
一体、何が言いたいんだ…?
綱吉の無言の問い掛けを悟ったのか、骸は上機嫌で先を続けた。

『僕が兄さんのことを大好きだって、もっとよく兄さんに伝えられる方法ですよ。
こんな傷は時間が経てばすぐに消えてしまうけれど……兄さんのこころに僕を刻み付ければ、絶対に消えることはないものね』

こいつは、何を言ってるんだろう。
ただ呆然と骸を見ている綱吉を他所に、骸は自らが殴りつけたせいで赤黒い痣がいくつも浮かび、無惨にも醜く腫れ上がった顔を愛しげに指で辿った。
そして唇にひとつ、くちづけを落とすと、わらって言ったのだ。

『…僕のものだ。にいさん。』

漸く何が行われようとしているのか悟った綱吉は死に物狂いで暴れたが、もう遅い。
既に散々痛め付けられた身体では、武道に長けた異母弟に敵うはずもなく。
下半身の服を剥ぎ取られ、ろくに慣らされもしないまま猛ったものを渇いたそこに突き入れられて、綱吉は絶叫した。

『……アアアアアアアアアアアアアアアーッ!!』

メリメリメリッ、と身体が真っ二つに引き裂かれるような感覚に、目の前が真っ赤に染まる。
やがて無理矢理男のものを受け入れさせられたそこが切れたのか、内股を熱いものがぬるりと伝い、綱吉はあまりの悔しさに涙を零した。

『…ぐ…ぅ………ガ、ハァッ‥…ゃ……アアッ…やめっ…やめろおおおおお‥ッ』

『ああ…気持ちいいです、兄さん。とても。
きつくて、狭くて、生暖かくて…兄さんが生きてもがいてるってよく分かる。
ぼくの、つなよし。あいしています…僕の手でその息の根を止めて、血の一滴も、骨のひとかけらすら残さず食べてあげたいぐらいに』

うっとりと呟きながら、血の滑りを借りてよりなめらかな動きで激しく突き上げられた。
ただ一方的な凌辱が何時間も続いたあとには、綱吉は泣き叫び続けてがらがらに涸れた喉をぜえぜえと喘がせることしかできなくて。
食いしばった歯の隙間から、ひゅうひゅうと枯木の間をすり抜ける木枯らしのような息を漏らす綱吉を見て、骸は赤い舌でぺろりと舌なめずりをするといつものようにニコリと嗤ってみせた。
それからの日々は、もう思い出したくもない。
永遠の悪夢のように続く、過剰な暴力と、異母弟との背徳的な情事。
こんなものにけして屈するものかと逆らえば、酷く殴りつけたあとに目茶苦茶に犯され、友人宅へ逃げ込めばすぐに使用人に連れ戻される。
綱吉の精神は日々を重ねるごとにごりごりとすり潰され、限界を越えても苛まれ続け。
…とてもでないが、大学卒業まで耐えることなどできなかった。
奈々が健在の頃から懇意にしてもらっていたバイト先の店長のツテで、六道グループとは全く無関係な今の会社を紹介してもらい、屋敷を飛び出した綱吉は沢田姓を名乗って即そこに就職。現在に致る。
すぐに見つけ出されて連れ戻されるのでは、と危惧していた異母弟も、一度も目の前に現れることはなく。
小さな教育資材販売会社は不景気ながらもそこそこに繁盛しており、現状に満足している綱吉はいつしか怯えを忘れて、平穏でごくごく普通な日々を満喫していた。
就職してからすぐ、同僚に誘われて参加した合コンで初めての彼女もできて、まさに順風満帆だったのに。
そこで綱吉は、顧客リストをノートパソコンに打ち込みながら、ハァ、と再び深い溜息を吐いた。
三日前…つまり、綱吉の誕生日の三日前であるが、もう二年近くは付き合っていた彼女に、好きな人がいるの、と突然別れを切り出されたのだ。
つい最近までそんな様子は微塵も見せていなかった。
その前に会ったときも綱吉の誕生日を一緒にお祝いしようね、とはしゃいだように言っていたのに。
いきなり突き付けられた別れに、綱吉は驚いて声も出せなかった。
とびぬけて美人とは言えないが、笑った顔が可愛くて、気立ての良い彼女。
ほんわかした雰囲気がどこか母の奈々を思わせて、燃え上がるような激しいものではなかったけれど、なだらかで穏やかな愛情を持って、綱吉なりに真剣に彼女を愛していた。
ゆえに振られたショックも尋常ではなく、普段ならば絶対に思い出したくもない過去のことまでつらつらと回想して、こうして鬱々と落ち込み続けているという訳なのである。

「……あっ、くそ…また間違えたあ〜」

そんな状態では当然仕事に身が入るはずもない。
この数時間で繰り返した、もう何度目かも分からない打ち間違えに、綱吉はうんざりと眉根を寄せた。
先程は部長にああ言ったが、始めた頃から大して進んでない仕事を見れば、大人しくコンビニでケーキでも買って帰ってさっさと寝た方がいいのかもしれない。
どうせ一人きりの暗くて狭い部屋に帰るのが嫌で、だらだらといつまでも資料をいじくってただけだし。
それよりも、さっきからお局さま(と、こっそり社員から呼ばれている。吊り上がった眼鏡が怖い。)の綺麗に整えられた眉がヒクついてるのが気になる。
さっさと帰って爆睡して、気持ちを切り替えよう。まわりに迷惑だし。うん、それがいい。
ここ数日、どんよりと暗い雰囲気を纏った陰気臭い綱吉についに嫌気が差したのか。
後ろに髪をひっつめて、現わになった額に青筋を浮かべた古株の女性社員の視線に追い立てられるようにして、綱吉はあわあわと帰宅の準備を始めた。

「すみません、部長。やっぱり体調が悪いみたいなんで、先にあがらせてもらっていいですか?」

「ああ、いいよいいよ。
仕事のことは気にしないで。最近綱吉くんはかなり疲れていたみたいだからね。
ゆっくり休みなさい。お大事にね」

部長に帰宅の許可を求めれば、人の良さそうな笑顔で快く頷かれる。

「それじゃあ、おつかれさまでしたー!」

「沢田さん、お疲れ様ですー」

綱吉はぺこりとお辞儀をすると、優しい上司を持ったことに感謝しながら足早にオフィスを後にした。



















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2007.03.27