失うくらいなら、:03
お題配布@BLUE TEARS様
「ぎあん、だいじょうぶか?まだ、いたい?」
白い指先が、心配気にギアンの秀でた額を辿る。
その幼い仕種に、ギアンは瞳を甘く緩ませた。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。大分時間も経ったし、もう痛くない。
いや、やっぱり痛いかな…ライがキスしてくれたら、治ると思うんだけど」
ねだるように上目遣いで見上げれば、ぷくっと膨らんだまろやかな頬が目に入る。
「もうっ、おれはほんきでしんぱいしてるんだからなっ!」
そう怒りつつも、顔を赤く染めながらちゅっと軽く唇を落としてくれる様子が愛しくて。
ギアンは殊更甘い笑みを口許に浮かべた。
しかしギィと、重く扉が軋む音に、不機嫌そうに振り返る。
ギアンが発する威圧感に、突然の闖入者は息を呑んでひざまづいた。
「お取り込み中失礼しまス…ギアン様、今度ノ作戦のコトで将軍ガ指示を仰いデいまス。スグにお戻リくだサイ」
「……………だれ?」
「ああ、私の部下だよ。気にしなくていい」
「……ふーん」
しかし、聞き慣れたはずの声音が信じられない言葉を紡ぐのを聞いて、弾かれたように顔をあげる。
ついこの間まで向けられていたやわらかな笑顔は消え去り、澄んだアイスブルーの瞳はギアンがいなくなるのはお前のせいだと言わんばかりに憎々しげにカサスを睨んでいた。
すぐに興味を失って視線が逸らされるが、そのちいさな横顔から呆然と視線を外すことができない。
「ぎあん、またいっちゃうのか…?ぎあんはおれのものなのに…」
「ん…もう一度言ってくれないか。よく聞こえない」
「だから、おれのすべてはぎあんだけで、ぎあんのすべてはおれだけだろ‥っ!もうわすれたのかよっ」
「いや、その通りだよ…私には君しかいないし、君には私しかいないんだったね。」
お決まりの台詞をライの口から確認して、ギアンは満足気に邪眼を細めた。
宥めるように頭を撫でて、顔中に優しくキスの雨を降らせる。
「ごめんね、ライ…。私もライの側を離れたくはないが、どうしても行かなければならないんだ。
私とライが二人きりで静かに暮らすためだから…いい子で我慢できるね?」
「……う…ん」
「すぐ、戻るから」
最後に小さな唇にくちづけて、ギアンは扉の向こうへと背を向けた。
うなだれたカサスを背後に従えて、鉄の扉が閉じられる。
もうそこに、鍵が掛けられることはない。
その必要がないからだ。
今のライならば、きっとギアンを信じていつまでも待ち続けることだろう。
「………アノ、」
ついに耐え切れなくなって、カサスが喘ぐように唇を開いた。
元の姿とはあまりにも違う、今の彼。
まるで別人だ。
自分のことも誰か分からないようだった。
こうなる前に、何も無かったはずがない。
しかし先を続ける前に、カサスの疑問はギアンによって遮られた。
「…君には本当に感謝しているよ、『獣皇』。お陰でライを手に入れることができた…本当の意味で、ね。」
「エ………?」
「だから、君がうっかりライに刃物を渡してくれたお陰だと言ってるのさ」
「……ッ…!?」
「私の角を傷つけたのはね、ライなんだよ。…尤も、今の彼はそんなこと知りもしないけどね」
そう言って、ギアンはまるでそこに傷があるかのように、愛おしげに額を撫でた。
確かに角に大きな亀裂が入り、ギアンは数日の間想像を絶する痛みにさらされた。
もう以前ほどの治癒力も持てなくなってしまったが、けれども彼を手に入れた代償だと思えば、これぐらいは安いものだ。
まだ時折酷い頭痛に襲われるが、この痛みも、傷も、彼が与えたものならば何よりもいとおしい。
懐からあのナイフを取り出すと、鋭い刃をべろりと舐めあげてみせる。
ギアンはうっそりと昏い笑みを浮かべた。
「悪いけど、これは貰っておくよ。…何しろ、ライが初めて私達の間に消えない絆を刻んでくれた、大事な証だ」
そのまま、振り返りもせずに立ち去ってしまう。
白いコートの裾が完全に廊下の暗がりに溶けるのを見届けても、カサスは凍り付いたかのように微動だにすることができなかった。
確かにあの時、備え付けてあったはずの果物ナイフが無くなっていることを訝しく思ってはいたのだ。
しかし、ライのやんわりとした拒絶に大きなショックを受けていたから、途中で落としたのだろうとさして気に留めることはなかった。
それが、こんな結果を招くなんて―――。
カサスは冷たい鉄の扉に背を預けて、ずるずると座り込んだ。
涙がとめどなく頬を伝って、服を深緑に染め変えてゆく。
違う、これは自分のものではない。彼の涙だ。
その思考を最後に、カサスはゆっくりと瞼を下ろした。
壊れたこどもの無邪気な笑い声が、きゃらきゃらと薄暗い廊下に響いていた。
終
先生大変です!セクター先生とギアン様の口調の書き分けができません!(死
だって二人とも私って言うんだもん…ギアンは僕って言ってるんだと信じきってました…。(涙
全員偽者度MAXで申し訳ない…いやいつものことなんですけどおおおおおおおおおおおおおお(遠い目
それと、もうひとつ…。
先生大変です!喘ぎ声をどう書いたらいいのか分かりません!(ほんともうお前黙れよ!
「あ」とか、「ん」とか、「や」とか、「は」とか、「ひ」とかを適当に羅列してるだけなんですが…これで大丈夫なのかしら?(´д`;)
誰か素敵エロ書き様にぜひご教授頂きたいです…題して、『萌えるエロの書き方〜喘ぎ声は重要よん♪〜』講座!…イイ!(☆∀☆)
……………ハイ、すみません、調子乗りました…ちょ、ま、イスは勘弁してやって…!
ハァハァハァ……まぁ何がともあれ、念願のギアライ書けてとても嬉しいです!
ギアライはなんかいっぱいネタ浮かんでくるのでこれからも増殖させたい…他にも王道のセイライとかグラライとかカサライとかセクライとかシンライとかも書きたいと思っておりますので、またお暇なときにでも是非是非覗いてやってくださいませ・・!
御影
※ブラウザバックでお戻り下さい。
2007.01.14