突発スザルル妄想











それはひどく純粋で、そしてなによりもおぞましい


「ルル」

ハッと振り向いたときには遅かった。
寮の自室に戻ってから訪れたのだろう、見慣れない私服姿のスザクが閉じたドアに身体を預けて立っていた。
普通より気配に聡い方だという自負はあるが、所詮は一般人。
特殊訓練を受けた軍人のそれに敵うはずがない。
ナナリーは定期検診のため外出しているし、C.C.はいつものようにふらりと姿を消している。
当分この部屋を訪れる者はないはずだ。

―――これでは、避け続けた意味が全くないではないか…!

無意識に小さな舌打ちが漏れる。
きっちり施錠をしなかった己の迂闊さを呪いたい。

「最近俺のこと避けてるよね、ルル?」

「………何のことだ?」

気付かれていたのか。慎重に慎重を重ねていたのに。
平静を装うが、語尾が微かに震えてしまったのが自分でもはっきりわかった。
スザクはいつも、とっておきの甘露を舌で転がすかのように、甘ったるく俺の名をよぶ。
一点の曇りも見受けられない、無垢な翡翠がただひたすらに俺に向けられていた。
一度その瞳に囚われてしまえば、俺に逃れる術などない。そう、いつだって。
ふいに、それまでなんの感情も浮かべなかったスザクの顔が柔らかくほころんだ。

「ルル、可愛い俺のルル。
どうしてルルはこんなにきれいなんだろう?」

「……やめろ、」

「何よりも純粋で高潔で、そして愚かだ。
この腐った世界でルルだけがうつくしい」

「やめろ‥ッ!もう…これ以上俺を掻き乱さないでくれ……頼むか、ら…」

「どうして?」

心底不思議そうに、スザクは小首を傾げて見せた。

「ルルーシュは俺のものなのに。
ふふ、ほんとに可愛いなぁルルは…怯えてるの?」

「………っ…」

「そんなにユーフェミア姫に俺を奪られるのが怖い?」

「…ち……、う」

「父親は憎むべきもの。妹は護るべきもの。母親は父親に殺された。
ルルーシュには縋れるものが何もない。
可哀相に、ルルはこんなに小さくてか弱くて臆病なのにね。
本当は誰かにたいせつに護ってほしくて、やさしく大丈夫だよって囁いてほしくて、壊れ物に触れるようにだいじにだいじに抱きしめてほしいのに、ね…?」

「……ちがうちがうちがう…ッ!!」

痛い。イタイ。いたい。
頭が割れそうに痛んで、両手で髪をぐしゃぐしゃに掻きむしった。
スザクの言葉が鋭い刃となって、俺のこころの奥のやわらかい場所を、ズタズタに引き裂いていく。
そうだ、俺は弱い。
そして臆病者だ。
でなければ何故今こうして呼吸をしているのか。母を殺された後、父の前に立ったあの時、銃口を向けて撃つことだってできたはずなのに。
けれど、俺はそんな自分をよく知っている。
だから切り捨てた。スザクを。
望んだものを全て手に入れることなど、できはしない。
一番欲しいものを手に入れるためには…ナナリーのためには、それ以外に目を向けるようなことなどあってはならないのだから。
幾筋も冷汗が額を伝い、ポタポタと床に滴り落ちた。

「違わないよ」

柔らかな茶色の髪がふわりと揺れ、深い翠玉の瞳がゆっくりと細められる。

「ちが、う………」

「違わない。ルルは無条件で縋れる相手が欲しかった。それを俺に求めていた。
だから逃げた。
俺がユーフェミアの騎士に命じられたから。
…俺が気付かないとでも思った?
周囲にも俺にも、悟らせないように避けようとしてたよね。
表面上は普通に接して、だけど絶対に踏み込ませない。いつも距離を測ってた。
分かるんだよ、ルルのことなら何だって。
だって、毎日ルルのことばっかり考えているからね」

くすくすと笑う様子を、ただ呆然と見ることしかできなかった。

「ずっとずっとずっと探していたんだけど、まさか軍に放り込まれた学校で会えるなんてね…やっぱり俺とルルは運命で結ばれてるんだと思わない?」

一歩、スザクが踏み出して、俺も数歩後ずさる。
ひやりと冷たいガラスの感触が敏感なうなじに押し当てられ、俺は逃げ場など無いことを悟った。

「俺が護ってあげる」

「……ぁ………」

窓際に預けていた身体をぐい、と強く引き寄せられ、軍人として鍛え上げられた胸元へと深く抱き込まれる。

「ね、俺がルルを護ってあげるよ。
ルルーシュの騎士に最もふさわしいのは、俺だ。そうだろう?
だって…」

俺の漆黒の髪を一房掴み取って、スザクが愛おしげにキスをした。

「ルルのためなら、自分の父親だって殺してしまえるんだから」

「ぇ…?」

澄んだ翠玉に、愕然と見開かれた紫紺の瞳が映り込んでいる。
俺は震える唇で、スザクの名を呼んだ。

「……ス、…ザク………?」

「あの時ああしなければ、君とナナリーは救えなかった。
戦争が続けば日本の国力は衰退の一途を辿り、ブリタニアに完膚なきまでに叩き潰されていただろう。
現在のように、日本の有力者達が残されることも無かった。ルルが隠まわれる場所など無かった。
だから俺はなんとしても戦争を終わらせたかったんだよ。
だから、殺した。」

見たことも無いような昏い眼差しでくつくつと嗤うスザクを、俺は言葉もなく見上げることしかできなかった。



















わたくし、ばりばりのルルーシュたん受け派で御座います。
たとえ世にスザク受け好きさんが溢れていようとも!
どんなにスザクが受け臭くても!
本編でルルたんが悪役ちっくに悪辣に笑っていたとしても!
ルルたんは総受けだよむしろそうゆう悪ぶってるとこがなお組み伏せたくなってイイ…ハァハァハァ(´д`*)
………はっ!申し訳ありません、取り乱してしまいましたわオホホホホホ。
まあそーゆーわけで殴り書きした妄想を掘り出して参りました。(爆
スザクは腹黒だよ〜ルルたんは受けなんだよ可愛いんだよ〜という私の一念が篭っております(笑

御影








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2007.02.22